現場の声

 
菊地 浩司(ACクリエイト株式会社/映画字幕翻訳者) 
勝負は日本語 菊地浩司
[おもな作品]
「アイズ・ワイド・シャット」
「エニイ・ギブン・サンデー」
「フリントストーン2」他

私は在宅の社長である。多くの方が会社に電話を掛けてきて「今日、社長はご出社、ご在宅?」と聞く。翻訳の仕事が入れば週の半分も会社に出ない。
一方、音声制作の仕事はチームプレーだ。演出、制作の打ち合わせ、役者、スタッフ全員集まって、スタジオでのアフレコ。だがここにも翻訳者はいない。いてもいいが、いなくてもいい。
だから音声連の集まりでも、制作や声優の話はしても翻訳者の話は出ない。外の人である。税務署が来て私の翻訳のギャラはどこに入れているかと聞いていたが、翻訳料だけは会社に収めている。私の場合、仕事は在宅でも収入は会社のものらしい。
私の属する映画翻訳家協会では翻訳料値上げや権利の話をする。片や制作プロダクションとしてはいかに翻訳料を安くあげようかと努力をする。この矛盾がつらい。質の良い安価な翻訳というのが大量に生産できればいいが、在宅手作業の翻訳者に大量生産は難しい。よく適当に下訳させて…などという声を聞くが、ヘタな下訳などがあるとかえって後が面倒くさい。英語の理解よりいかにいい日本語を作るかの方が大変なのだ。
吹き替えも字幕も勝負は日本語である。そこに私の在宅とプロダクションとしての仕事がある。楽しい日本語版制作の根本原理は同じだ。これは各社とて共通であろう。
いい日本語版を作るため、これからもますます音声連の一員として努力をしていきたい。

 

小山 悟(株式会社ケイエスエス/日本語吹替え演出家)※所属は寄稿当時
信頼は一日にして成らず 小山悟
[おもな作品]
「ダイ・ハード」
「E.T.」
「トップガン」
「ミッション・トゥ・マーズ」他

訳も分からず、この業界に足を踏み入れて四半世紀。スタッフのお茶汲みやスタジオの後片付け、夜食の買い出しに走り回った新米時代が昨日のことのように思い出されます。
以後どれだけの洋画作品に携わってきたことか。時には勇ましく闘い、時には犯人を追い詰め、時には人も羨むような大恋愛をし、泣いたり笑ったり、それはもう色々な人生経験をさせてもらいました。
土曜も日曜もなく3日に一度の徹夜も、諸先輩方からの叱責にも耐えてこられたのは、唯々映画が好きで好きで堪らなかったからでしょう。気が付いたらケイエスエスという所で、次代の人々を育成する立場になっていました。
今の私の最大の悩みは、教育の難しさです。育った環境の違う若人に私の経験を押し付ける訳にいきません。私の背中も中々見てくれません。それでも時々酒を酌み交わしながら言うのは「信頼は一日にして成らず」ということです。
信頼は何日、何ヶ月、何年もかかってやっと築けるもので、たった一回の失敗で簡単に崩れ去るものでもあります。その恐ろしさを常に意識しつつ、緊張感をもって仕事にあたることを忘れてはなりません。
これからも一本一本誠実に、日本語版の制作をしてゆきたいと思います。

 

水本 完(株式会社ザック・プロモーション/音響監督)※所属は寄稿当時
感動を伝えたい
[おもな作品]
「昆虫物語みなしごハッチ」
「新造人間キャシャーン」
「おそ松くん(新)」「みどりのマキバオー」
「幽☆遊☆白書」他  

私が始めてアニメのオーディオを担当したのは30数年前、柔術家の少年が父の仇を探して世界を旅する「紅三四郎」というテレビシリーズでした。
アニメというと子供の頃見たマンガ映画の記憶しかない私は、その第1作目のラッシュを見て驚嘆しました。しっかりしたリアリズムに裏打ちされた大胆な表現、深みのある色調、テンポのいい運び、「ええ!!これがアニメなの!」…と、まさに目からうろこでした。初めて見た音のない映像によって私の中に生まれた喜びや悲しみや感動をこれから見る人達にきちんと伝えていかなければと、何もかも手探りでしたが夢中で取り組みました。何より有り難かったのは完成されたフィルムがアフレコの1か月前に私の手許に届けられていたということです。音楽は絵に合わせて作曲され、効果さんも、1つ1つの音を十分に練り上げる時間を持っていました。消耗品ではなく作品(文化)が創り出される恵まれた状況はありました。
あれからアニメブームが来て、バブルが来て…絵のない画面でアフレコ・ダビングをするという悪戦苦闘の日々が10年以上も続き、絵を創る人達もオーディオの側も精一杯頑張り続けています、これが常態ではないことを念じながら。

 

明田川 進(株式会社マジックカプセル/音響監督)
銀河に夢を馳せる
[おもな作品]
「AKIRA」
「ぼのぼの」
「佐武と市捕り物控」他

今、私たちをとりまいている文化、地球上に人類が誕生し、それぞれの地域で文明を築き上げてきた。文明はそれぞれの宇宙観を持ち、その歴史は常に宇宙観と共にあった。星々の運行に我々は心をうばわれ、その神秘を探り続けてきたのだ。
私は少年時代、小松崎茂のイラストや手塚治虫のマンガ等で宇宙に夢を馳せた。それが現在はテレビの前で宇宙探査機から送られて来る電波で華麗なる宇宙ショーを楽しむことのできる時代に生きているのである。その時代に『銀河英雄伝説』がアニメーションになって誕生したのである。
そしてこの銀河の世界に古より73枚のCDとともに15人の大作曲家(モーツァルト、ベートーベン、ブルックナー、マーラー、チャイコフスキー、ドヴォルザーク等)たちが登場し夢の大饗宴を奏でることになった。仕事上クラシックは無縁ではないが73枚ものCDを一度に聴いた事は初めてである。
劇場版から始まって現在までビデオシリーズも150話近くが制作されている。キャスティングが原則として1人1キャラクターいうことで男性に関しては新人の方々を除いてほとんどの方々に出演していただいており、銀河声優伝説とも言われております。
まだまだ続く銀河に夢を馳せながら楽しんでおります。

 

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